矢崎真名さんからいただきました。

Piece Green〜昇〜

 外はとても穏やかだ。天気もいい。日向ぼっこしてる老人とか、遊具で遊ぶ子どもたちとか、結構にぎやかだよな、公園は。あ〜ここんとこ色々あったから、普通の光景見てるだけで落ち着く〜。って・・・何年寄りくさいこと言ってるんだ?俺は。


普通の高校生だったはずなのに、ある日いきなり空都に行って、訳が分からないまま旅をして、そのまま色々あって、空都のみんながこっちに来て、しかもシェリアやショウもお嬢やあのセイルとかいうやつも、果ては極悪人さえも学校に行くことになって・・・・・・って、こうやって振り返ってみると、もう充分普通じゃないじゃね〜か!!
あ〜もう一体これからどうなるんだよ!?


ふと気づくと、目の前に誰かが立って、こっちを見ていた。年は俺より下かな?ってとこで、色素が薄い髪に黒い目。パッと見、性別が分かんないけど男だろ。制服ガクランだし。それにしたって、なんでこっち見てるんだ?・・・もしかして俺また表情に出してたのか?うわ〜かなりの変人に見えるかもな、こりゃ。
「何か用か?」
俺の問いに、そいつはえ?っていうような顔になる。そして、そいつは俺にこういった。
「あんた、苦労してるみたいだなって、表情見て思ったもんで。」
おい、それは一体どういう意味だ?いや、間違っちゃいないけど(泣)そいつは俺の反応に何を思ったのか、よく分からん顔してたけど、不意にでかいため息をついた。・・・・・・何というか、そのため息のつき方は・・・何かをあきらめたとか、苦労を重ねてる、俺がつくようなやり方と同じで・・・
「お前も・・・苦労してるんだな。」
思わず口をついて出たのは、同類という意味のセリフ。
そいつは案外あっさりうなずいて、
「ああ。」
といって苦笑した。そいつはそのまま隣に座り、俺たちは色んなことを話した。俺の場合、現実とかけ離れすぎていることなので、たとえ話にしたけど。あ、そういや名前聞いてないな・・・。
「お前の名前、なんていうんだ?俺は大沢昇っつーんだけど。ちなみに高一。」
あ・・・そいつはどこかバツが悪そうにうめいた。本人の口から出た言葉で、俺はなんとなく理解する。
「・・・今野望。・・・中三。」
「別にいいよ。気にするな。」
俺が笑ってそういい、肩をたたく。どこぞのお嬢は俺を年上とも敬ってないし。まあ、そうしたらそれはそれで怖いけど。それよりはずいぶん可愛げがある。そういわれて安心したのか、望もふっと笑う。つーか、その笑い方にあってる。俺らはどこか似てる部分があるかもしれないけど、やっぱり他人。感じ方一つとっても違うモンなんだな。

望は昔っからトラブルに巻き込まれやすいらしく、何かあっても受け入れようとするけど、中々環境になれないらしい。俺は・・・大体今現在そんなんだけど、昔からじゃないし・・・望も大変だ。逆に、こっちは不思議なくらい適応力あるけど、変な話だな。
「あ、そろそろ行かねーと。」
「どこに?」
「そろそろ電車に乗らないと集合できないんだ。修学旅行、抜け出してきたから。」
さらりととんでもないことを言った望に、俺はなんと行っていいのか分からなくなる。旅行抜け出して、何しにここに来たんだ?俺の視線に気づいたのか、
「会いたい人・・・まあ、昔の友達だな。そいつに会いに行ってたんだ。」
どこかはにかんだ笑みで、望は答える。そっか。あえなくなった友達に・・・会いに行く為か・・・会いたくとも会えない人もいるけれど・・・
「じゃあな。」
「ああ、またな。」
俺たちは互いに言葉を交わし、望は背を向け歩き出した。


 その瞬間、望の姿は一瞬にして幻のように消えてしまった。い、一体なんだったんだ??今までのは全部幻?
いや、違う。確かに、さっきまで望は俺と話してた。望の肩をたたいた右手は、強くたたきすぎたのか、少し痛い。それが、確かに望がここにいた証拠だ。幻なんかじゃない。そして、なんとなく理由がわかって、なんだかなぁ〜って思う。
「もう充分、普通の・・・なんて、いえないか。」
それがおかしくもあり、悲しくもあり・・・俺は苦笑するしかない。でも、みんなに会えたのは悪いわけじ
ゃ・・・ないと思ってるし。
「さて、俺も帰るか。」
俺は一人つぶやいて、公園をあとにした。また望に会えたらいいな・・・なんて思いながら。
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