EVER GREEN 番外編
師匠の独白
「それではノボル。資金稼ぎ頑張ってください」
そう言うと、少年は眉間にしわを寄せた。
時間というものは曖昧で、とても不確かなものだ。
忘れるということは、一体何を意味するのだろう。
覚えているということは、一体何を意味するのだろう。
二人を共有するのは血塗られた記憶。子供はそれを恐れて心を閉ざし、大人は忘れたくないがために仮面をかぶった。
全てを忘れてしまった少年と全てを覚えている自分。一体どちらが幸せなのだろう。
もしかすると、時という枷に縛られているのは俺の方かもしれない。
「試練を受けているのは俺の方かもしれないな」
それは長い長い道のり。本当に一抹の小さな希望。
そのほんの些細な希望に挑戦しようというのだから、自分でも愚かだとしか言いようがない。
「何か言った?」
どうやら人知れず声に出してしまっていたらしい。女性の容姿をして振り向く弟子に苦笑する。
この光景を見たら、彼女は何と言うのだろう。何をやっているんだと怒るだろうか。それとも――
「早く行ってきなさい。それとも、ずっとその格好でいたいんですか?」
そう言うと、今度は顔を真っ赤にして少年は去っていった。
手出しはできない。それは彼女との約束なのだから。
だが今はもう少し、このままで……。