EVER GREEN

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第七章「沙漠(さばく)の国へ」

No,0 プロローグ

 剣(つるぎ)。それは人の創りし武器。
 剣。それは道を切り拓(ひら)くもの。
 『剣』は『剣』であってそれ以外の何ものでもない。それだけの存在だから自分の信じるままに生きなさい。

 ――と言われても、ボクにはピンとこなかった。だってボク、ただの高校生だよ? 何の力もないのに何をどうやれって言うのさ。そう言ったらお姉ちゃんに笑われた。『そんなの自分で考えな』って。
 ボクの家は六人家族。おじいちゃんとお父さんとお母さん、お姉ちゃんと弟。どこにでもある普通の家。ちょっと違うのは家がパン屋さんってことと、ご先祖様のことくらい。
 ご先祖様のことは昔っから耳にタコができるくらい聞かされてきた。『世界と世界をまたにかけて冒険した』とか『遠いところからやって来た』とか。世界とか遠いところって言ってもせいぜい外国のことだろうって思ってたけど、地球、空都(クート)、霧海(ムカイ)を行き来してたって言うから驚きだ。それがどこでどう間違って日本のパン屋さんになってるんだろう。世の中って不思議なことだらけ。
 さらに言うと我が家にはたくさんの格言がある。『三つの力を束ねて見守りなさい』とか『剣の力は極限の状態でこそ発揮されるものだ』とか『寝る前にはちゃんと歯を磨け』とか。本当にどんなご先祖様だったんだろう。
『お前も世界を見て来い』この一言でボクは見知らぬ場所に飛ばされた。そこで出会ったのが大沢をはじめとする面々。『オーサワ』って響きにピンときてかたっぱしから調べまくったんだよね。この行動力すごいっしょ?
『でも、そのおかげでこうしていろんな場所にいけるし、いろんな体験ができるからね。ものは考えようかな?』
 そうそう。あの時はそんなこと言ったんだよね。それは昔も今も変わってないけど。
 ボク、生まれてくるなら男の子がよかったな。元気一杯動き回れるし、なんかカッコいいし。そう言ったら弟に言われた。『姉ちゃんは今でも充分元気すぎるよ』って。しっつれいしちゃうなー。
 でもご先祖様には感謝してるんだ。文字通り世界を行き来するなんて我が家じゃなきゃできないことだし。知らないことを知るってとっても新鮮。そうだよね。不平不満を言っててもしょうがないものはしょうがないし。やるっきゃないっしょ。それがボクの役目なら。

 ところで、ボク達『剣の一族』には昔からのしきたりがある。一つは世界を見てくること、一つは剣をつくること。
 一つ目は今やっているとして、もう一つが難しい。『剣』自体の意味があいまいで不確かなものだから。要は『剣』と呼ばれる道具か武器を作ればいいってことらしいけど、だったらはじめっからそう言えばいいのに。
 でもそれだけじゃ意味がない。持ち主がいて、使い手がいて剣は初めて意味をなす。さしずめボクはその作り手。世界をまたにかけた鍛冶屋さん?
 だから――
「よっしゃ!」
 これがボクの剣。
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