第六章「旅立ちへの決意」
No,0 プロローグ
こんな平和な場所があるんだな。
この世界での率直な感想がこれ。今までハードな人生送ってきたと思ってたけどまさか異世界に来ることになるとは思ってもみなかった。まあ、ぼくに言わせれば今までが変わりすぎてたからわりとすんなり受け入れられたけど。
平和ボケした人間。周りのことなどお構いなしのバカな奴ら。もしぼくのいた所に来たら一発でアウトだ。
けど、なんか憎めなかった。なんでだろうな。
ここの生活は新鮮で面白かった。
このままずっとここにいれたらいいのにな。あの時つぶやいた言葉はもしかしたら本心かもしれない。
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ここは平和な場所だ。
誰かに追われることもましてや殺されることもない。
目障りな奴もいるが目をつぶればそれほど気にするようなことでもない。
だが、このままでいいはずがない。
彼女がいるのはこの世界ではない。一刻も早く向かわなくては。
だがどうやって?
彼女を助け出すだけの力が今のわたくしにあるというのか?
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「あーっ、あのヤローいきなり単語テストなんてするか? しかも50覚えて出てくる単語はたったの10? サギだサギ!」
「ああいう奴なんだ。あの人は」
「そりゃわかってたけど。ショウいくつ覚えた?」
「10。ノボルは?」
「12」
ぼくをこの世界に連れてきた張本人は『てすと』とやらに頭を抱えている。
会って間もない人間を身を呈してかばう勇気があるくせに、なんでそんなことに真剣に悩んでるんだか。やっぱりこの世界の人間ってバカなのか?
『……けどさ。あーしたい、こーしたいってみんなそれなりに考えて生きてんだよ。どんな場所でも苦労はあるし幸せだってある。それってどこの世界でも同じだろ?』
確かにそうなのかもしれない。だけど、ぼくは――
わたくしを『地の惑星』に連れてきた人間は空都(クート)の人間と共に学問にはげんでいる。
『ま、なんとかなるさ』
わたくしの不安を目の前の人間は立った一言で笑ってのけた。どうして笑っていられるのだ? どうしてわたくしを助けようとするのだ?
城から抜け出した時、本当は不安でたまらなかった。いつ追っ手が来るのかわからない。一体いつまで逃げ続ければいいのだ。確かに鳥かごから抜け出すことはできた。だがこれで本当によかったのか?
「なんで空都(クート)の人間の出した問題に地球人のオレがこんなに苦しまなきゃならねーんだ!」
「それは俺のセリフ。なんで俺が異世界の外国語なんか覚えないといけないんだ」
『はあぁぁぁ』
……こいつは、ただのバカだ。
「なんだよ二人とも」
「別に」
「いいねぇ。君達は平和で」
『へ?』