矢崎真名さんからいただきました。

淡いピンクの花びらが風に舞う。その中心に立つ少女は、風をめいいっぱい受けて、踊っていた。自然の喜びをいとおしむかのように・・・真新しい制服は、花と同じような、淡いピンク色をしており、少女自身も花のように、スカートをひらめかせ、くるくる回っている。

桜の側のアスファルト。そこに一人の少年が、何かに魅入られたようにそこに立っている。少年の視線の先には、その少女がいた。赤く頬を高潮させた少年は、声をかけるべきか迷い、覚悟を決めて、

「あ、あの!」

声を出した。一瞬、少女は振り向き、にっこり、優しげな笑みを残すとフッと消えた。

少年はしばし呆然とし、

「精霊?」

小さな声でつぶやいた。





 精霊の守護する世界。喜びを享受するものたち。しかし、人に精霊が見える、もしくは精霊が人の前に姿を現すのは滅多なことではない。そういう意味で、少年は幸運だといえる。遠くから、少年の名を呼ぶ声が聞こえた。少年は、それに答え、そこを去ろうとする。

「また、会いにくるよ。」

ほんの少し、はにかみながら少年は桜に向かってそういった。そのまま少年は、駆け出した。新たな出会いの場所のために。

 穏やかで、優しい風が、少年の頬を撫でる。



『待ってるわ。』



そんな、甘い誰かの声を乗せて・・・・・・。





「ねぇ、ねぇ、知ってる?あそこの桜の木には、精霊が宿ってるんだよ。」






おわり

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