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● Fairy tail  --- 第一話 妖精と女子高生 ●

 机の上に、妖精が寝ていた。
「…………」
「美由希(みゆき)、美由希?」
 誰かが声をかけてくるのがわかる。でも今のアタシはそれどころじゃない。
 その妖精はというと、
「グーーー」
 寝てる。大きないびきつきで。
「…………」
「美由希?」
「ねぇ、コレ見える?」
 机で寝ていた妖精をむんずとつかみ、誰か―兄貴の目の前に突き出す(途中『グエッ』と言う声がしたけど聞かなかったことにする)。
「何かいるのか?」
 兄貴は不思議そうな顔をしてる。どうやらコレが見えるのはアタシだけらしい。
「なんでもない。用事ができたからちょっと出かけてくる!」
 そう言うと、妖精をバックの中に押し込み、部屋を後にした。



 妖精。ようせい。
1.人の姿をした自然物の精霊。フェアリー。
2.怪しい化け物。妖怪。(某国語辞典より)

「とりあえずこんなところか」
 休日の図書館は人が多い。
 突如目の前に現れた妖精を調べるようと、がらにもなく資料探し。けど辞書に載ってたのはせいぜいこれくらい。やっぱり別の本も調べないと駄目かなぁ。でも長い本って疲れるしなー。
「ん?」
 バッグが動いてる。携帯(電話)でも鳴ったかな?
「ん??」
 今度は声が聞こえる。
「あ」
 いけない。すっかり忘れてた。
 大慌てでバックのボタンをはずす。しばらくして中から声の主が出てきた。
(テメー、何しやがる!)
 妖精が怒ってる(まあ閉じ込めてたから怒るのもしょうがないか)。
「アンタこそ、人の机で何してたのよ」
 アタシも負けじと言い返す。
(決まってるだろ。昼寝だよヒ・ル・ネ)
「いい身分よねー。こっちは勉強中だってのに」
(そんなの、おれの勝手だろ?)
「そうだけど。よりよってなんでアタシの家なのよ」 
(それこそおれの勝手だろ?)
「勝手じゃないわよ!」
 目の前で妖精が寝てる様と言ったら! すっごく驚いたんだから!
(どーでもいいけど、後ろ見てみろよ)
「え?」
 妖精に言われるまま後ろを振り返る。
 そこには司書の人がいた。付け加えるなら、周りの人達もこっちを見ている。
 どうやら知らず知らずのうちに大声になってたみたいだ。
「あはは。ちょっと調べ物してて」
 慌てて笑顔でとりつくろうとするけど、周りの視線はこっちを向いたまま。
(調べ物してて大声になるのか?)
 すかさず妖精がツッコミを入れる。
「あ、もうこんな時間だ。じゃー。さよーならー!」
 ツッコミは無視して無理矢理話を終わらせると、さっきと同様、妖精をバックに詰め込んで図書館を後にした。



(テメー、人を何回閉じ込めれば気が済むんだ!)
「人じゃないじゃん」
 妖精の一言にツッコミを入れ、買ってきたハンバーガーにパクつく。
 場所は変わって公園のベンチ。
 一旦、家に帰ろうかとも思ったけどお腹がすいたから近くのファーストフード店でセットを買った。家で食べるのもそれこそ味気なかったからここで食べてるってわけ。それに、ここなら騒いでも大丈夫だし。
「アンタって口悪いわねー。それが初対面の人に言うセリフ?」
 食べながら、改めて目の前の妖精を見る。
(それはおれのセリフだ)
 どうやらバックの中に閉じ込めたことをまだ根に持ってるみたい。
(だいたいなー)
 妖精が何か言おうとするその前に、
『グーーー』
『…………』
 二人のお腹がなった。
(おまえ、食い意地はってるな)
「仕方ないでしょ! 育ち盛りなんだから!」
 とは言っても、もう十八になるんだけど。でもすいちゃったものは仕方ない。
「はい」
(?)
「アタシだけ食べるわけにもいかないでしょ。アンタも食べる?」
 そう言ってフライドポテトをちぎって渡す。
「感謝しなさいよ。高校生のお小遣いって少ないんだから」
 でも妖精って人の食べ物って食べれるのかな?そう思って妖精の方を見ると、
(…………)
 一心不乱にポテトを食べてる。どうやら気に入ったみたい。
「そんなにがっつかなくてもまだあるわよ」
 アタシじゃないけど、この子も相当お腹がすいてたみたい。あれだけあったポテトをものの十分で食べてしまったんだから。
「閉じ込めちゃったおわびはこれでいい?」
(まあ、いい。コレうまいな。なんて名前だ?)
「フライドポテト」
 食い意地がはってるのはどっちなんだか。
「ねぇアンタ妖精なんでしょ? そうよね?」
 妖精がポテトをたいらげたのを見計らって、疑問に思ってたことを口にする。
(なんだよ急に。違うって言ったらどうかするのか?)
 体長は手のひらサイズ。短い髪に背中には四枚の羽。これを妖精と呼ばずしてなんと呼ぼう。
「辞書って結構役に立つのねー。でもこの記載は違うみたい。アンタはどうなの?」
 そう言って、さっき借りてきた国語辞典を妖精の目の前に突きつける。

3.西洋の昔話などに不思議な術を持つ女の小人として出てくることが多い
(同じく某国語辞典より)

「アンタ、どう見ても男の子だし。不思議な術ってどんなの? 見せてよ」
(なんで今日会ったばかりのテメーに見せなきゃならねぇんだ)
「『テメー』じゃないわよ。……そっか、名前まだ言ってなかったっけ。」
 ここに来て、お互い名乗りあってなかったことに気づく。
「アタシは美由希(みゆき)。野中美由希。アンタは?」
(おれは……)
 言いかけて、とまる。
「もったいぶらないで教えなさいよ。へるもんじゃないでしょ」
(るせぇっ!思い出せないもんは仕方ねーだろ!)
「へ?」
 思い出せない? それって……
「記憶喪失なんて、ありきたりなネタ言わないでよ」
(…………)
 妖精は黙ったまま。
「ひょっとして…マジ?」
(じゃなかったら誰がそんな面白くないこと言うか)
 どうやら大マジみたい。悪いこと聞いちゃったかも。
(見ての通り、おれはただの記憶喪失の妖精。わかったからもういいだろ。じゃーな)
 そう言って飛び立とうとしたところを手を伸ばして捕まえる。
(テメー、何度も何度も!)
「『じゃーな』って、どこに行くのよ」
(勝手だろ。気のみ気のまま、ぶらり旅なんだから)
「アンタは寅さんか」
(なんだ?それ)
「なんでもない、こっちの話。気のみ気のままってことはアテがないんでしょ?だったら家にくればいいじゃない」
(なんでそうなる!)
「どうせさっきまでアタシの家で寝てたんだからその延長だと思えばいいのよ。ね?」
 本当は別の理由があったりするんだけど、あえてここでは言わないでおく。
「じゃあそーいうことで。あ、いつまでも『アンタ』じゃかわいそうよね。アタシが名前つけたげる。そーだ、『ユキ』なんてどう?」
(なんだその安直な名前は!)
「アタシの名前の一部をあげたのよ。それとも『名無しのゴンベエ』がいい?」
(勝手に人の名前を決めるな!)
「はいはい。じゃあそのへんも含めて家でしっかり話し合いましょう」
 手の中で暴れる妖精をバックに詰め込み、ボタンをしっかりとめる。
(〜〜〜〜!!)
 バックの中で妖精―ユキがわめいているようだったけど、この際無視しておく。

 こうして、アタシとユキの記憶探しが始まった。
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